冴羽獠に沼った小学生は手を挙げて! 強火ファンが語る『シティーハンター』の魅力

冴羽獠に沼った小学生は手を挙げて! 強火ファンが語る『シティーハンター』の魅力

コルトパイソン357マグナム4インチ。

この文字列を見て、「ああ『シティーハンター』ね」とパっと頭に浮かぶ人はなかなツウな方とお見受けします。人気ハードボイルド漫画『シティーハンター』で主人公・冴羽獠が扱う愛銃であり、多くの子どもたちが憧れの眼差しを向けたリボルバータイプのハンドガン。いったいどれだけの小学生男子が同じ型のエアガンを親にねだったのでしょうか。

かくいう私も小学生の頃から『シティーハンター』の大ファンであり、その愛情はいまも変わりありません。むしろ近年の劇場版アニメシリーズ公開によって、ますますヒートアップしている状況です。もちろんフランス実写映画版も、鈴木亮平さん主演の実写映画版も鑑賞済み。「全くの別物」と悪名高い、ジャッキー・チェン主演の香港実写映画版すら1周回って好き!

というわけで今回は、いまなおファンに愛され続けている『シティーハンター』の魅力や思い出について熱く語っていきたいと思います。

私は世代的に原作漫画1話をリアルタイムで読んだわけではなく、気づけばテレビアニメシリーズも放映されているタイミングで作品に魅了されました。『シティーハンター』の何がそんなに面白いの? と聞かれたら、もはや「全部」としか答えようがなく、個人的には『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』よりもどハマりした作品でした。

何よりもまず、主人公の冴羽がひたすらカッコいい。いま思えばマグナムを片手でぶっ放し、さらにはワンホールショット(発射した弾丸をすべて同一箇所に貫通させる技法)までキメてしまう怪物ぶり。悪を一掃する姿に迷いはなく、射撃から格闘術まで優れた姿に惚れずにはいられません。それでいて美女にとことん弱く、もっこり、いやムッツリスケベなのにまったく憎めない。キャラクターとして隙がなく、まさに完璧な存在といえます。

また、『シティーハンター』は冴羽だけでなく周囲のキャラも魅力的。冴羽の相棒・槇村が闇の組織ユニオンテオーペの手にかかり、代わりに冴羽とパートナーとなった香は、冴羽と同等に欠かすことができないほど大きな存在となります。他にも冴羽の良きライバルであり、香にベトコン仕込みのトラップを教え込む師匠役となった海坊主、冴羽を色仕掛けで攻略する警視庁の敏腕刑事・野上冴子など、書き出せばキリがないほど魅力的なキャラが登場しました。

北条司先生の圧倒的な筆致で描かれるアクションシーンも、漫画でありながら冴羽たちの躍動感が伝わってくるようで、いまでも小学生のころ熱中して熟読していた記憶がありありと蘇ってきます。何を大袈裟な、と思われるかもしれませんが、私にとって『シティーハンター』はバイブルといっても過言ではありません。

初めてコミックスをそろえた作品であり、その一部は親の入れ知恵で入賞した校内の交通安全標語コンテスト賞品の図書券で賄いました。図書券をもらった足で書店に直行し、帰宅してから母親に問い詰められてこっぴどく叱られたのも良い思い出です。ちなみに当時集めたコミックスはいまでも実家に眠っていますが、2019年の『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』公開を機にコミックスを読み直したい禁断症状に駆られ、文庫版コミックスで全巻買い直しました。

もちろん冴羽の愛銃と同型のエアガンも、父親に買ってもらいました。父親は陸上自衛隊出身かつ当時ミリタリー好きの警察官だったので、息子がエアガンをねだってきたとノリノリだった感もあります。一般的な父子がキャッチボールやサッカーで絆を深める仲、我が家では父親から射撃を習っていたなあ、としみじみ……。

話を『シティーハンター』に戻しましょう。では、どのエピソードがおすすめかと聞かれれば、これも「全部」としか答えようがありません。やはり初回エピソードは子ども心に衝撃的でしたし、終盤に登場するミック・エンジェルに関連するストーリーも捨てがたく。あえて選ぶとしたら、「海坊主と足ながおじさんの巻」でしょうか。

主人公の話じゃないのかよ、という声はさておき、海坊主の魅力が大爆発した回です。海坊主は恩師の娘・真希を人知れず援助しており、冴羽とともに彼女のボディガード役を引き受けます。とはいえ美女好きの冴羽の手からも真希を守らねばならず、変装してまで尾行する姿がなんとも可笑しい。とにかく爆笑必至の回ですが、ほろりとする場面もあるのでおすすめです。

私が生粋のファンであることはご理解いただけたかと思いますが、だからこそ劇場版アニメの公開には驚かされました。<新宿プライベート・アイズ>で約20年ぶりの新作アニメーションだったわけですから、新作公開の情報が発表された際は我が目を疑ったものです。とはいえ解禁された特報でテレビアニメシリーズの伝説的ED曲「GET WILD」が流れた瞬間、私は確信しました。これは、本気(マジ)だと──。

一方で、不安に感じる部分があったのも事実です。ハードボイルドアクションはいつの時代もひとつのジャンルとして受け入れられていますが、冴羽の下心丸出しの行動は現代のコンプラからすると受け入れられないのでは、という危惧がありました。かといって冴羽から下心を奪ってしまったら、冴羽でなくなってしまうような……。

ところがいざフタを開けてみれば、コンプラ的にアウトな部分をあえてネタにするという妙技を見せているではありませんか。さらに原作連載時には存在していなかったスマホやドローン、現代的な戦術もストーリーに取り入れるなど、作品の魅力を損なうことなく自然にアップデート。それでいて冴羽や香たちが「あの頃」と変わらない姿や声で現れ、テレビシリーズのテーマ曲もふんだんに使用してくるリスペクトぶり。『シティーハンター』を知らない層にアピールする作品でありつつ、往年のファンに向けたラブレターに、私は映画館の席で思わず涙を流していました。

2023年には『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が公開され、前作とは別の意味で衝撃を受けることになります。<新宿プライベート・アイズ>は原作にないオリジナルストーリーを描いてヒットを記録しましたが、エンジェルダストは槇村の死や冴羽の出自を描いた原作で最も重要なエピソードがベース。前作の雰囲気とは一転して、シビアなストーリーが展開しました。

さらに作品のキーマンにして冴羽の父にして最大の敵である海原神まで登場し、「マジか、マジか」とあわあわしているうちに気づけば終幕。いやマジか……。現時点でエンジェルダストの続編は発表されていませんが、これで終了とはならないでしょう。

『シティーハンター』を語る上で、声優に触れないわけにはいきません。昨今のアニメリバイバルブームはファンを喜ばせる一方で、声優陣の入れ替えで落胆することも。そんな状況の中、『シティーハンター』は約20年ぶりの新作にして当時のメインキャストがそのまま戻ってきました。長年のファンである私の胸を熱くした大きな要因でもあります。

もし冴羽獠の声がテレビシリーズの神谷明さんでなくなっていたら── そう考えただけで、誇張でもなんでもなくゾっとします。神谷さんの声じゃない冴羽なんて冴羽じゃない。そう思えるくらい、神谷明さんもまた、北条先生とともに冴羽獠というキャラクターを作り上げた創造主のひとりなのです。

これは余談ですが、<新宿プライベート・アイズ>公開時に『シティーハンター』愛を叫びまくった結果、巡り巡って神谷さんとお話しさせていただく機会を得ることができました。ファン道ここに極まれり。神谷さんはとにかくファン思いの方で、時間いっぱいになったタイミングにも関わらず「まだ聞きたいことはない?」と冴羽のように優しく尋ねてくださった姿に感動したものです。同時に、心の中で「ああ『シティーハンター』を好きになって良かった」と小学生のころの自分に感謝していました。

長々と語ってしまいましたが、時を経て新作が発表されることは「ファン冥利に尽きる」のひと言。とはいえ、エンジェルダストの展開上、次作でいよいよアニメシリーズ全体に終止符が打たれる可能性もあります。どんなかたちであれ、今後制作されるであろう続編をしっかり見届けることがファンの務めではないでしょうか。

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