約30年を経てまさかの新作公開! 人生オールタイムベスト映画『ツイスター』の魅力

約30年を経てまさかの新作公開! 人生オールタイムベスト映画『ツイスター』の魅力

子どもの頃の「原体験」は、その後の人生に大きく影響する── と私は考えています。小学生の時にハマったコミックスを大人になってから買い直した、旅行先の風景が忘れられず免許を取ってから再訪した、校外学習でのスキー体験が忘れられなくて毎年スキーに行くようになった、などなど……。

何を隠そう私自身、1996年7月に公開されたハリウッド大作『ツイスター』で映画に目覚め、いまでは年間200本ほど劇場で鑑賞する立派な映画好きに成長しました。いや、成長してしまいました。

『ツイスター』は竜巻研究に情熱を注ぐストームチェイサーを描いたディザスター(災害)映画で、当時最先端の視覚効果技術を用いて荒れ狂う竜巻を描いた作品。いわゆるポップコーンムービーでもあるので批評家受けは高くないものの、私にとっては映画に開眼するきっかけになった記念碑的作品であり、いまなお「人生オールタイムベスト」として君臨しています。

そんな『ツイスター』の新作がなんと28年ぶりに制作されたとあって(8月1日公開の『ツイスターズ』)、“日本一の『ツイスター』ファン”を自称する私は気が気ではありません。

一度は完結した作品で「○○年ぶりの新作!」「○○年ぶりに続編が始動!」というニュースが発表されると、一部ファンから「いまさら!?」「完結してるのに作る必要ある?」と批判の声が巻き起こることがありますよね。私はこれまで「別にいいじゃんね」という感情を抱いていましたが、すみません自分が間違ってました。「いまさら作る必要ある?」とめちゃくちゃモヤモヤしました。

それくらい、自分にとって『ツイスター』は大切な作品でもあります。よく考えてみてください。多感な少年がテレビで見た竜巻が家屋を木端微塵に破壊する予告映像に興味を抱き、実際に劇場で鑑賞した結果鳥肌が立つほどの興奮を覚え、爛々と目を輝かせていたわけです。

昨今は若者の映画離れが叫ばれていますが、中学生にしていきなりおかわり(同じ作品を複数回鑑賞すること)しました。劇中のストームチェイサーに感化されて高校入試の面接で「将来なりたい職業は?」と聞かれて「竜巻研究者です(キリッ)」と真顔で答えたりもしました。

もし『ツイスター』をご覧になったことがなければ、「そこまでの作品なの?」と疑問を抱かれると思います。…… あの、このまま『ツイスター』の魅力を語っていいですか? いいですねありがとうございます。

そもそも『ツイスター』はクリエイター陣から最強のメンツが揃っています。まず監督はいまもアクション映画の名作として語り継がれる『スピード』のヤン・デ・ボン。製作総指揮はスティーブン・スピルバーグが務め、脚本はあの『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトンが妻のアン=マリー・マーティンと共同で執筆しました。

主演を務めたストームチェイサー役のヘレン・ハントは、その後オスカー女優に。もうひとりの主演ビル・パクストンは、『エイリアン2』や『タイタニック』に名を連ね、ジェームズ・キャメロン監督にその才能を高く評価された数少ない人物。

またストームチェイサー仲間のフィリップ・シーモア・ホフマンもオスカー俳優となり、トッド・フィールドはいまや『リトル・チルドレン』や『TAR/ター』の監督として、アカデミー賞にノミネートされるほどの実力者へと出世を遂げています。ただ、この28年間でパクストンとホフマンが早逝してしまったことが残念でなりません。

魅力的なキャストを揃えた『ツイスター』ですが、なんといっても最大の魅力は荒れ狂う竜巻による「破壊描写」にあると思います。序盤から竜巻の進行方向上にあった農家とサイロが粉々に破壊され、宙を舞ったサイロの屋根が主人公たちが駆る車のそばに落下してくるシーンで私の心はぎゅっと鷲掴みにされました。

ヤン・デ・ボン監督は自分が観客になったつもりで、観客が「このアングルで観たい!」と思う構図を意識して撮影に挑んでいます。そのため『ツイスター』はとにかく観客を興奮させる視点が多く、竜巻で吹き飛ばされたモーターボートが奥の方からカメラに向かって飛んできて、カメラの直前で地面にバウンドしてカメラの真上を通過していくカットに私自身「うわ!」と身をのけぞってしまったほど。主人公たちの目の前で牛が鳴きながら飛ばされるシーンは、いまや伝説となりました。

『ツイスター』は王道の少年漫画的な作品とも呼べるかもしれません。主人公たちはなんとか竜巻研究装置を設置しようと、竜巻(敵)に挑み続けて失敗を繰り返します。竜巻も回を重ねるごとにスケールがアップして力を強めていき、クライマックスでは竜巻のスケールで最大規模となる「F5」の巨大竜巻が主人公たちを待ち構えることに……。

ちなみに竜巻は勢力によってF0~F5の6段階に分けられていますが、このFスケールは世界共通。気象学の権威・藤田哲也博士が考案したもので、最大規模のF5は一般的な家屋が根こそぎ吹き飛ばされ、土台しか残らないほどの威力です。日本でも竜巻は発生することがあるものの、F4以上の竜巻はこれまで観測されたことがないそう。

『ツイスター』の舞台になっているオクラホマ州は、アメリカの「竜巻銀座」と呼ばれるほど竜巻が発生しやすい地域のひとつ。そのおかげ? で映画でも繰り返し竜巻が発生しているわけですが、竜巻は発生から進路、消滅に至るまで多くのメカニズムがいまだ解明されていません。そのため竜巻研究者たちは日夜竜巻を追い続け、その姿が主人公たちストームチェイサーに落としこまれるかたちで映画で描かれました。

クライマックスに近づけば近づくほど、『ツイスター』の竜巻は凶暴化していきます。ドライブイン・シアターではスクリーンや周辺施設が破壊され、終盤のF5との対決では家がごろんごろんと転がり、吹き飛ばされたトレーラーや農耕車が雨あられのように降り注ぎます。劇場公開当時は一般劇場にIMAXや座席連動型の4DX、3面にスクリーンを設置したSCREEN Xなどなかった時代ですから、いまの時代に公開されていたら間違いなくアトラクションムービーとして話題を呼んだのではないでしょうか。

というわけで、『ツイスター』への愛情はいまでも変わっていません。もしかすると年々増しているくらいかも。公開当時に購入したパンフレットはつぶさに読み尽くしましたが、大人になって古本屋で発見した際に嬉々として再購入しました。

ノベライズに関しては公開時に購入した2冊をいまでも本棚に保管しています。さすがに約30年前の書籍とあって黄ばみが見られるものの、いまも表紙は色褪せないですね。左が原作の脚本、右が竜巻解説の文庫書籍。

『ツイスター』に関してはビデオソフト、DVD、Blu-rayとフォーマットが進化するたびに買い直しています。それに『ツイスター』は劇中の音楽がすこぶるカッコよくて、私が映画音楽に開眼するきっかけにもなりました。サウンドトラックもスコア(BGM)盤、コンピレーション(ボーカル曲)盤、のちに発売されたスコア拡張盤(初回発売時に未収録だった楽曲も収録)を所持しています。

いま思えば『ツイスター』のグッズをもっと購入すればよかったなと。数年前に映画好きの友人から「キーホルダーあるけどいる?」と聞かれ、二つ返事でいただきました。感謝感謝。実家に戻れば、前売り券特典として付いてきたツイスターボトル(ボトルの中に溶剤が入っていてシェイクすると泡の渦ができる)があるはず。

新作『ツイスターズ』は、本国アメリカで予測を大きく上回るオープニング興収を打ち立て大ヒットスタートを切りました。大の『ツイスター』好きとして安心したというか、素直に嬉しいですね。日本公開を機に『ツイスター』を観てくれる人がもっと増えたら…… なんて期待も抱きつつ。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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